2025/02/27
近年、国内外から再注目されているアイヌ文化。以前よりも耳や目にする機会が増えたからこそ改めて「学んでみたい。知りたい。」と思い、今回は北海道・白老町にある「ウポポイ(民族共生象徴空間)」に行ってきました。
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ウポポイはポロト湖畔の広大な敷地に「国立アイヌ民族博物館(アヌココㇿ アイヌ イコロマケンル)」や「国立民族共生公園(アヌココㇿ ウアイヌコㇿ ミンタラ)」 、「慰霊施設(シンヌラッパ ウシ)」で構成された、アイヌ文化を学べる施設です。新千歳空港からは高速道路を使って車で約40分、電車では最寄り駅のJR白老駅まで同様の約40分で、駅からは徒歩約10分と好アクセス。
入口の「いざないの回廊」を通り、エントランス棟のゲートを抜けると、主に6つのエリア(施設)で構成されています。また、アイヌ語を第一言語とするウポポイでは、施設名などにアイヌ語が表記されています。
体験学習館、体験交流ホール、国立アイヌ民族博物館、工房、伝統的コタン、エントランス棟の6つです。入場ゲートを越えた有料エリアはとても広く、無料の園内バスを利用して巡ることもできます。
このバス、実は歩くスピードよりも若干遅いくらいのスピードなので、歩いたほうが早いかもしれませんが、冬場は少しでも暖かいほうを選択しちゃいますよね。
私がアイヌ文化についてもっと知りたいと思ったきっかけは、アイヌ文様でした。私がこれまで経験してきた文化とは異なるものが多いので、さまざまな部分で興味をもちましたが、一番惹かれたのはこの点。衣服や道具、祭具などに見ることができる文様はどれも特徴的で、力強いのに親しみがあり、とても印象に残るものでした。いつかそんな文様をもっと見てみたいと思っていましたが、現地でも今回たくさん触れることができ、写真に収めてきました。
当日は11時から16時過ぎまでたっぷり1日満喫させてもらいましたが、それでも足りないくらい。体験した内容は以下の9つの内容です。
まず紹介したいのは食文化を体験できるプログラム。オハウとは「汁物」を意味します。アイヌ民族にとって、オハウは欠かせない伝統的な料理のひとつです。今回は「チェㇷ゚ オハウ(魚の汁物)」と「サッチェㇷ゚(干し魚)」、「エント茶」をいただきました。こちらのプログラムは要予約。
オハウの汁は塩と動物などから採取した油だけで味付けされたもので(体験時の食事の油は異なります)、とてもシンプルな味わいですがコクがあり、口にすると体が温まるのを感じます。このオハウの具材には鮭などの魚やユㇰ(鹿)、キナ(山菜)が使われます。
冬の時期になると、屋外に吊るし干される魚の光景は伝統的コタン(集落)の冬の風物詩です。私が行った時期はまだ見ることができなかったのですが、ウポポイでも12月中旬から2月上旬には、この光景を見ることができるそうです。
アイヌ語では「いただきます」という直接的な言葉はなく、代わりに「イペアン ロー」と声かけをして食べます。「食事をしましょう」という意味だそうです。素敵な掛け合いですよね。
伝統芸能上演「イメル」 画像:(公財)アイヌ民族文化財団
体験交流ホールでは、ユネスコ無形文化遺産にも登録されているアイヌ民族の伝統芸能を鑑賞することができます。いくつかの演目舞台があるそうですが、今回は「イメル」という舞台を鑑賞。とにかく圧巻! 各地の伝承者から直接指導を受けて演目が組まれているそうですが、遠くまで響く発声と歌声、力強くしなやかな舞、ムックリという楽器を使った演奏はアイヌ民族の世界に一気に引き込まれます。演目の内容は都度説明後に鑑賞できますが、見終わったあとに説明が記載されているパンフレットを読み返してみると、より演目のすばらしさを感じることができますので、その点もチェックしてみてください。
また演目中にもあったムックリという楽器は、その後の時間で実際に演奏体験ができるのですが、これが難しい! 一緒に体験した10名くらいのうち、音を出せたのは(演奏のレベルではない)2名程度でした。
楽器演奏体験「はじめてのムックリ」
素晴らしい音色を聞いたばかりなので、体験者の皆さんは音を出せるようになるために必死に取り組んでいた様子です。演奏体験は時期によりますので、事前にホームページからチェックしてみてください。
アイヌ民族の歴史や文化を今に伝え、未来につなげていくことを目的に建てられた博物館。
展示室は「私たちのことば(イタㇰ)」、「私たちの世界(イノミ)」、「私たちのくらし(ウレㇱパ)」、「私たちの歴史(ウパㇱクマ)」、「私たちのしごと(ネㇷ゚キ)」、「私たちの交流(ウコアㇷ゚カㇱ)」の6つのテーマに分けて展示されているので、とても見やすい設計に。
博物館を訪れるまでに、1日を通してさまざまな演目や体験に触れていたので、展示されている内容もすんなりと頭に入ってきて、巡る順番がとてもよかったと感じました。博物館は今回のように最後に訪れるか、最初に博物館で勉強してから巡るかのどちらかをおすすめします。個人的には最後推しです。
お土産の購入は、ぜひミュージアムショップで! 私はアイヌ文様が入ったコースターを購入!
ウポポイは季節によって提供されるプログラムが変わりますが、秋冬はホワイトシーズンとして、寒さ厳しい冬を過ごす知恵や工夫をさまざまなプログラムを通して体験できます。また、この時期を彩る毎年恒例のイルミネーションがとても人気。
2025年1月13日終了でイルミネーションは終了となります。
イルミネーションには、アイヌ文化にゆかりのある動物が浮かび上がります。
国内ではなく、海外旅行好きの方に「海外旅行の魅力は?」と聞くと、「異文化を学べるから」と答えが返ってくることが多いですが、ウポポイはまさにそれを体験できるスポットです。そしてその異文化は異国の地ではなく、日本国内に存在している文化です。だからこそ、日本人が知るべき内容です。
「アイヌ」という言葉はアイヌ語で「人間」です。人間の生活とともにある自然などのカムイに対して私たちは人間であるという意味だそうです。
一方で、カムイはいわゆる神とされていますが、アイヌ文化での捉え方は従属関係ではなく、どちらかと言えばお互いに(良い)影響を及ぼしあう互恵関係だと考えられています。
今回、アイヌ文化に触れて感じたのは「共生」と「感謝」です。私たちは文化や集団、社会など、さまざまなコミュニティの中で生きています。その広さや深さは多様ですが、その規模に関わらず、常に(人に限らない)他者がいて、その中で礼をもって接していくことの大切さを、改めて気づかせてくれるスポットです。
日本各地に訪れるとさまざまな土地ごとの歴史や文化を目の当たりにします。旅の魅力はそこにあると思いますが、アイヌ文化もそのひとつです。感じ方は人それぞれだと思いますが、ウポポイではさまざまな「気づき」を与えてくれます。自然とともに生きていること、自然の中で生活をしていること、その恵みに感謝の気持ちを忘れないこと。私はそんな当たり前のことを改めて思い出させてくれた貴重な時間をウポポイで過ごしました。ぜひ、皆さんも現地で体験してみてください。
参考になりましたか? 旅行・おでかけの際に活用してみてください。
記事企画・監修:旅色編集部 ふかい
ライター:ふかい
ウポポイ(民族共生象徴空間)