体験レポート

母と泊まった、とっておきの一泊。嬉野八十八で「ととのう」旅
ふるおやふるおや

佐賀県:嬉野温泉

家族・母娘 / 40代 / 行った時期:3月

2026/04/07

母と泊まった、とっておきの一泊。嬉野八十八で「ととのう」旅

毎年、母の誕生日にはプレゼントを贈ってきましたが、今年は少し趣向を変えてモノではなく「旅」を贈ることにしました。ふたりでゆっくりできる場所。温泉があって、食事が美味しくて、「来てよかった」と心から感じてもらえるような宿——。条件はすぐに揃っていきました。サウナが好きな母に、プライベートサウナのある部屋を。茶道をたしなむ母に、お茶の産地を舞台にした宿を。そして私自身もお茶やハーブティーが好きだから、ふたりでお茶を楽しめる場所がいい。すべての条件が重なったのが、佐賀・嬉野温泉に2023年秋にオープンした「嬉野八十八(うれしのやどや)」でした。そして気づいたら、行き先の名前は「嬉野」でした。母への誕生日旅行の目的地としては、これ以上ない名前じゃないかと思いました。

佐賀へ。レンタカーで焼き物の里を巡りながら

温泉だけが目的なら、新幹線で充分だったかもしれません。でも今回は、茶道をやっていた母に、器の産地を見せてあげたかったので、長崎空港でレンタカーを借り、有田・伊万里を経由して嬉野へ向かうルートにしました。長崎空港から嬉野温泉まで、高速道路を使えば約35分。でもこの日は焼き物巡りをしながらゆっくりと佐賀を横断しました。自分たちのペースで気になる窯元に立ち寄れる、レンタカーならではの贅沢旅です。

チェックインからもう、お茶づくし

フロントで迎えられ、部屋へ向かうまでの館内にも、早速この宿らしさが滲んでいました。館内には3カ所、セルフ式のティースポットが設けられており、嬉野茶を自由に試飲できます。歩きながら気になったところでふらりと立ち寄れる気軽さがよかったです。なかでも玄米緑茶が私と母のお気に入りで、何度もおかわりしてしまいました。八十八の館内のスポット名はどこもお茶にちなんでいます。蒸し饅頭や飲泉がたのしめる湯煙茶屋スポットは「ON温」、バーは「茶壺」、ティーセレモニールームは「嬉野茶会 十徳」、子どもの遊び場まで「お茶のこさいさい」。遊び心のあるネーミングを見つけるたびに、「お茶」というテーマへの本気度が伝わってきました。

一杯のお茶に、茶師の誇りが宿る

母屋のティーセレモニールーム「嬉野茶会 十徳」でティーセレモニーに参加しました。地元の茶農家が専属茶師として登場し、嬉野茶の歴史と文化、正しい淹れ方、そしてお菓子とのペアリングまで、さまざまな角度でお茶の世界を案内してくれます。
茶師が丁寧に育てた茶葉を、蒸しの玉緑茶、氷出しの玉緑茶、釜炒り茶の3種類、それぞれに最適な温度と作法で振る舞ってくれました。嬉野茶は黒い布を10日間かぶせて作られること、玉露になると20日間かぶせること——そんな製法の豆知識もさりげなく教えてくれます。知れば知るほど、手元の一杯が愛おしくなりました。旨味だけを抽出したお茶は、お茶というより昆布だしに近い味わいで、生まれて初めて飲む感覚でした。「ほんとに旨味が凝縮されてるわねー」と、母が少し驚いた顔で言いました。一杯のお茶に、茶師の誇りと愛情が確かに宿っていました。

美しいだけじゃない、理にかなった茶器

印象的だったのは、茶器の美しさです。使われていたのは、「224porcelain」の辻諭さんの作品で、真っ白な磁器に流線形のフォルムが際立つ、見惚れるような茶器でした。この形には理由があって、茶葉が開きやすく香りも逃げにくい設計になっているそうです。茶道の格式とはまた異なる、現代的で自由なお茶の楽しみ方がここにはありました。

扉を開けた瞬間の「わあ」

案内されたのは、八十八別邸の101号室「浅緑(あさみどり)」。扉を開けた瞬間、隣に立っていた母が「わあ、すてき―!」と声を上げました。それだけで、この部屋を選んで正解だったなと思いました。
別邸の中でも最上位のラグジュアリースイートで、源泉100%掛け流しの半露天風呂、プライベートロウリュサウナ、そして水風呂まで備えた特別室です。広々とした室内にはウォークインクローゼットや専用のお庭まで付いています。部屋のテーブルには嬉野を中心に半径88キロ圏内の地図が描かれていて、宿のコンセプトがここにまで徹底されていることに、思わず笑ってしまいました。

荷物を減らせる、嬉しい気配り

就寝用の白いパジャマと館内着の作務衣、2種類のウェアが用意されていました。2種類揃っている宿はなかなかないので、細やかなおもてなしが行き届いているなと感じました。アメニティも歯ブラシ、シャワーキャップ、くし、ヘアゴムに加え、化粧水・乳液までセットで備わっていて、しかも男女それぞれ分けて用意されていました。ドライヤーはダイソンを採用。今どきのトレンドをちゃんと押さえているなと思いました。細かいアメニティをわざわざ準備していかなくて済むのがありがたく、手ぶらに近い感覚で泊まれるのも嬉しいポイントでした。

一室で完結する、「ととのい」のフルコース

温泉→サウナ→水風呂→テラスでの外気浴。「ととのう」のフルコースが、この一室だけで完結します。プライベートサウナでは3種類のお茶を使ったロウリュが楽しめ、サウナハットもととのい椅子も完備。サウナ好きの母にとっては、夢のような空間だったと思います。リビングに設けられたお茶処では、お風呂に入るたびにお茶でひと息つく贅沢な時間のループが自然と生まれました。

とろりとなめらか、日本三大美肌の湯

嬉野温泉は、草津・白浜と並ぶ「日本三大美肌の湯」として知られる名湯です。源泉100%掛け流しなのは部屋の半露天風呂でも大浴場でも変わりません。
そのとろりとなめらかな肌触りは、お風呂あがりにすぐ化粧水をつけなくてもいいくらいの保湿力の高さでした。シャワーヘッドはリファを採用しており、細部へのこだわりも抜かりありません。大浴場には茶アロマのオートロウリュサウナと、お茶の香り漂うドライサウナが併設されており、季節によってお茶の種類が替わるのも粋な趣向です。母とふたり、広々とした空間で交互浴をじっくり楽しみました。翌朝、顔を見合わせると「なんかツヤツヤしてるね」とお互いに褒め合ってしまいました。

財布を気にしない、という贅沢

別邸宿泊のもうひとつの魅力が、オールインクルーシブプランです。チェックインからチェックアウトまで、館内の飲み物やアクティビティがすべてプラン料金に含まれています。
部屋の冷蔵庫にはワインやビール、ソフトドリンク、さらにはアイスまで揃っていて、すべて追加料金なし。バー「茶壺」のドリンクも同様です。飲みたいときに、飲みたいものを、気兼ねなく手に取れます。お酒が好きな方なら、それだけでもかなりお得感があるプランだと思います。部屋にはあらかじめ5種類の嬉野茶が用意されていて、滞在中に好きなものを試せる仕組みも嬉しいポイントでした。気に入ったお茶はお土産として購入もできるので、茶道をたしなむ母も、お茶好きの私も、どれにしようかと真剣に飲み比べました。

昼間とは違う顔を持つ、夜のバー「茶壺」

バー「茶壺」は落ち着いた照明が心地よく、昼間のにぎやかさとはまた違う時間が流れています。お茶を使ったオリジナルカクテルを頼んでも追加料金なし。レモンサワーを頼むと、レモンの皮を凍らせたものがマドラー代わりに添えられていて、思わず「初めて見た」と声が出ました。グラスを傾けながら、母に仕事の話をたくさん聞いてもらいました。こういう時間が持てたのも、この旅の良さだなと思いました。

器と食材が、旅の記憶とつながる

夕食は料理屋「折摘」の個室で、プリフィックス形式の会席をいただきました。嬉野を軸に半径88km圏内で育まれた旬の食材が、料理長の手で一皿一皿に丁寧に仕込まれています。メニューは2カ月ごとに変わるので、季節を変えて再訪する楽しみもあります。
食卓を彩る器は、有田焼・伊万里焼・肥前吉田焼。昼間に産地を巡ったばかりだったので、手元に届いた器がひときわ輝いて見えました。「あ、これ有田で見たやつと似てる」と母が言うので、出てくる器が何焼なのかふたりで当て合いっこしながら楽しみました。旅の記憶が食卓でもつながる、そういう体験ができてよかったです。
今回の旅は母の誕生日祝いでもあったのですが、スタッフの方々が歌いながらホールケーキを運んできてくれて、一緒にお祝いしてくれました。記念写真まで撮ってくれて、宿からのプチプレゼントまで。サプライズの温かさに、母も私も思わず顔がほころびました。

迷うのも楽しい、お茶のお土産

お土産コーナーもお茶の商品が充実していて、見ているだけで楽しくなります。茶葉とティーバッグの両方が揃っているので、本格的に淹れたい人も手軽に楽しみたい人も、自分のスタイルに合わせて選べるのが嬉しいところ。緑茶だけでなく、紅茶やほうじ茶もあってバリエーションも豊かです。パッケージも可愛らしく、贈り物にも喜ばれそうなものばかりでした。種類が多くて迷ってしまいましたが、スタッフさんが味の特徴や人気の商品、それぞれのお茶のストーリーまで丁寧に教えてくれたので、納得して選ぶことができました。

モノではなく旅を贈ってよかった

チェックアウトの朝、荷物をまとめながら「行くまではどうなるかと思ったけど、連れてきてくれてありがとう」と母がぽつりと言いました。
プライベートサウナでととのった体、専属茶師のお茶で整った心、西九州の食と美しい器、財布を気にせず過ごせるオールインクルーシブの安心感——そして長崎空港から始まった焼き物の産地巡り。嬉野八十八には、「ここでしかできない体験」がぎゅっと詰まっていました。
モノではなく旅を贈ってよかった、と心から思いました。
チェックアウト前には、部屋に備え付けのタンブラーに滞在中に気に入ったお茶を詰めて持ち帰れるサービスもありました。私は迷わず玄米緑茶を選びました。始まりから終わりまで、お茶で満たされた旅でした。
また一緒に来ようね。今度は、父にも味わってもらいたいな。

旅色編集部 ふるおや

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記事企画・監修:旅色編集部 ふるおや

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