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2025/09/16
瀬戸内海に浮かぶ江田島(えたじま)は、いまや“オリーブの島”として知られつつあります。青い海と穏やかな潮風、そして銀緑(ぎんりょく)色に輝くオリーブ畑が織り成す独特の景観は、都会では味わえない開放感とリラクゼーションを与えてくれます。広島市内からフェリーでわずか30〜40分というアクセスの良さも魅力で、週末トリップに最適なロケーションです。
この島では、市役所・農家・地元企業・学校などが一丸となり、オリーブ産業を地域振興の核に据えてきました。広島旅行で体験を通した学びや、人とは違う穴場旅を求める方には、江田島はうってつけの目的地! この記事を通して江田島とオリーブの魅力に触れて、次回の旅の参考にしてみてください。
1945年の終戦後、江田島では広島湾防衛のため置かれていた軍用地の転用に伴って、ミカンや養蚕(ようさん)といった多角的農業が試みられました。しかし1970年代に入ると海外産果実との価格競争が激化し、農家は耕作放棄や高齢化という二重苦に直面します。転機となったのは2011年。江田島におけるオリーブの歴史は、市役所と地元企業による「江田島市オリーブ振興協議会」が発足したことから始まります。
江田島は、年間日照時間およそ2,000時間という瀬戸内エリア屈指の晴天率を誇る、「瀬戸内海気候」です。冬でも比較的温暖なため霜害が少ないのも特徴で、その一年中穏やかな気候はオリーブの栽培にぴったり。土壌環境に関してもオリーブ栽培には良いことづくめで、花崗岩が風化した水はけの良い砂壌土により根腐れリスクが低いとされてます。また、オリーブは乾燥と日射しを好む地中海性植物ですが、江田島の年間降雨量は日本の平均を下回る1,200mmほど。約16.2度の平均気温も、下記のデータからオリーブ栽培に適することが見て取れます。さらに、夏季に吹く海風がオリーブの果実の表面を乾かしてくれる効果もあるといいます。
■オリーブに適している気候
気温:15.0度
雨量:1,000mm
日照時間:2,000時間
■江田島市の気候
気温:16.2度
雨量:1,206mm
日照時間:1,954時間
※気候データは峰尾さん提供
まさに“オリーブの島”としてぴったりな土地です!

資料があり、とてもわかりやすい
江田島では市の振興協議会、市民、企業・団体、学校が官民一体となり、江田島産オリーブの魅力を知ってもらうための、さまざまな取り組みを行っています。その一環としてオリーブ畑での収穫体験や栽培講習会が開催され、オリーブに触れる方が徐々に増加。その甲斐あって、島民の「オリーブは難しい作物」という先入観は「島の可能性を広げる作物」へと変わっていきました。こうした普及活動の積み重ねが、ついに現在の「アグリコルトゥーラ(農業)」と「ツーリズモ(観光)」を組み合わせた「アグリツーリズモ型観光」に結実。年間で多くの方がオリーブ畑や搾油の見学を楽しむ、体験型の観光コンテンツまでに成長しました。

データなども交えて丁寧に説明してくれます
「瀬戸内いとなみ舎/オリーブラボ江田島」代表の峰尾亮平さんは、いわば江田島を“オリーブの島”へと押し進めた立役者。オリーブの島を目指す江田島の試みに賛同し、「地域おこし協力隊」として江田島に移住されました。もともと農業は未経験でしたが、オリーブ栽培の技術指導員を経て起業を決意し、本格的にオリーブ事業をスタートさせたそうです。
そこからは、がむしゃらにオリーブ作りに取り組む日々。栽培したオリーブを使ったオイル作りにも着手するようになり、栽培・搾油・ボトリング・販売を一気通貫で行う「六次産業化モデル」を構築されました。この事業モデルでは、単にオリーブを栽培するだけでなく、加工やブランド化に注力できるのが魅力。峰尾さんが手間暇かけて作ったオリーブオイルは2022年、2023年には国際オリーブコンテスト「OLIVE JAPAN」で銀賞を受賞。さらに2024年、「ニューヨーク国際オリーブオイルコンペティション」で金賞・銀賞を受賞と、世界に認められる快挙を成し遂げました。

数々の受賞歴
これにより、江田島産のオリーブオイルが世界レベルの品質であることが証明され、そのブランド価値が、国際的に認知されるきっかけとなりました。
峰尾さんが代表を務める「瀬戸内いとなみ舎/オリーブラボ江田島」では、オリーブの栽培・加工・販売に加えて、見て・触れて・知って・味わうオリーブ体験も実施されています。まずは隣接するオリーブ園に移動して、実際にオリーブの木を見てもらうところから体験はスタート。また、オリーブ園の名称となっている「イリニ」はギリシャ語で「平和」を意味し、旧約聖書の「ノアの箱舟」に由来しますが、オリーブは平和の象徴とされています。「“平和の樹を広島で育てる”ということに意味がある」と、峰尾さんはオリーブ園の名称に込められた思いを語ってくれました。


オリーブ園では、ハートのオリーブの葉をみんなで探します。通常は葉脈が1本なのですが、まれに成長過程で自然変異を起こして葉脈が2本となるものがあり、ハート形になるそうです。四つ葉のクローバーみたいですよね。
この日は気温も高かったですが、みんな真剣
みんな、意外に真剣に探しています。この日は気温も高く長い時間探すことができなかったので、集中して探していました。
そんななか……
みつけた、ハートのオリーブの葉!
あった! 僕、見つけちゃいました!
ちょっと分かれ具合が浅いですが、葉脈はしっかりと2本あり、正真正銘のハートのオリーブの葉。当日は20名くらいで探していましたが、見つけられたのはこの一枚だけ!
四つ葉のクローバーと同様、見つけることができると幸せになれるのだそうです。幸せになりたい!

続いては、オリーブラボにてオリーブオイルのテイスティング体験。テイスティングの前に、画面に映る資料を使って丁寧に江田島とオリーブのことを説明していただけました。この話が普段オリーブについての知識のない僕にとってはより面白く、興味深い内容ばかり!
そして、そのお話を聞く際に提供していただいたオリーブ茶がこちら。
オリーブ茶
飲む前に味の想像はできませんでしたが、これがとてもおいしい。口に含むとほのかな苦味のあとに甘い余韻が広がり、鼻から抜けるハーブ系の香りが心地よく残ります。実より葉っぱのほうが栄養も多いということなので、身体に良さそうなのも嬉しいポイントです。
ついに江田島産オリーブオイルのテイスティング体験です! 味わうだけではなくオリーブについて学べる講義もあり、まさに驚きの連続。これまでのオリーブオイルの概念を見事にぶち壊してくれました。実際には、
①「江田島のオリーブについて/良いオイルとは? 」の講座で江田島オリーブについて学ぶ
②3種のオイルの飲み比べ(江田島産2種、市販1種)でオイルの個性を感じる
③シンプルな食材とのペアリングで「味変(あじへん)」を楽しみ、オイルの使い方を知る
という、主に3つの行程で進んでいきます。
①の講座にある江田島オリーブの歴史などについてはすでに本記事内で述べているので、②の3種のオイルの飲み比べから紹介します。

江田島産オリーブオイルのテイスティング体験
まず写真のようなお皿をスタッフの方が運んできてくれます。最初に使うのは手前にABCと書かれた小さいコップに注がれたオイルです。
これを写真のように手でこすって温度をちょっと高めて、香りを閉じ込めたら少量を順々にテイスティングしていきます。
現地で体験したときの楽しみが減ってしまうので、どれが江田島産かは記載しませんが、市販のものとはっきりと味の違いが分かり、ちょっと感動しますよ。江田島産の2種類も味はまったく異なり、草っぽさ・辛み・甘みなどさまざま風味を感じられます。
ペアリング用に用意されている食材は、豆腐・チキン・醤油の3種類。さらにあとからヨーグルトも出てきました。

それぞれの食材に合わせると甘みやコクが増すものや、塩加減が増して感じられるもの、ジューシーさを感じるものなどがあります。「味変」といいますが、まさにその通り。一方で市販のものは味がぶつかってしまい、味がぼやけてしまう印象でした。
食材とのペアリングのシーンでも、はっきりと味の違いが分かります。
体験の最後に、 「オリーブオイルは調味料です」と峰尾さんがしてくださったお話がとても印象に残っています。オリーブオイルはまだ、サラダ油などと同じ炒め油としての用途だけで使われてしまっていることが多いのだそう。テイスティング体験で実感するのは、こちらで作る江田島産オリーブオイルは、食材の旨味を引き出す優れた逸品ということ。醤油や塩のようにテーブルの上に常に置いて、調味料のひとつとして置いてもらえるよう魅力を広めていきたい、と語る峰尾さんの思いがひしひしと伝わり、この体験をした全員の納得した表情からもうかがえました。

オリーブを広める方法は何もオイルだけではありません。古代ギリシャでオリンピックの勝者に授けられたオリーブ冠にならい、江田島ではオリーブ冠を“努力と友情の象徴”として根付かせようとする試みが始まっています。そしてその江田島産のオリーブ冠を、私たちはもうすでに目にしている可能性も!
江田島産のオリーブ冠は、市内の学校の運動会など地域のイベントだけでなく、フィギュアスケートの国際大会など、世界的なスポーツイベントの表彰式でも採用されているそうです。オリーブラボでは冠作りのワークショップも行われているということなので、ご興味のある方は、事前にSNSなどでチェックしてみてくださいね。

峰尾さんは江田島産オリーブオイルを通して、島を訪れる観光客をはじめ地域の人口や雇用の増加など、さまざまな地域活性化を目指しています。移住してから数年でさまざまなことを成し遂げる姿に、江田島の未来が楽しみだと感じたのは私だけではないはずです。ぜひ、現地に訪れて江田島を肌で体感してみてください。広島市街からもフェリーでアクセスの良い江田島、穴場でおすすめですよ。
参考になりましたか? 旅行・おでかけの際に活用してみてください。
記事企画・監修:旅色編集部 ふかい
ライター:ふかい