2024/11/20
富山といえば?と、考えるとまず「食」を浮かべる人も多いはず。“天然のいけす”と称される富山湾で水揚げされる新鮮な食材を活かした料理はもちろん人気です。今回はそんなグルメではなく、古くから伝わる伝統技術に着目して、富山の魅力をご紹介します。
この記事の目次
目次を開く ▼
旅行・おでかけメディアで仕事をしていると、「今、日本でおすすめ旅行先は?」と、よく聞かれますが、当分は「富山の井波です」と、私は即答するはず! 仕事で訪れる機会を今回いただきましたが、井波の景色、音、香り、人に私はすっかり魅了されてしまいました。
町自体はそんなに大きな町ではありません。狭いエリアですが彫刻の伝統を守り、今もなお約200名の職人が技術を磨いている町です。だからこそ全国随一の木彫りの町として認識されています。観光の中心となる八日町広場には観光案内所や有料駐車場があり、ここを拠点に町を巡る人が多くいます。
八日町広場から井波別院 瑞泉寺に向かって伸びる通りは石畳。約200メートルの緩やかな坂になっていますが、通りには井波彫刻の工房などが軒を連ねています。どの工房も開放的ですぐに声をかけられるような構えです。一歩工房に踏み込むと木の香りが漂っています。職人に声をかけたら、気さくな方が多いので答えていただけますが、オープンな作りになっている1番の理由は、日の光を入れて作業するためだそうです。だからこそ職人のノミや木槌を打つ音がきれいに聞こえてきます。
小気味よく、とても心が落ち着く音。風景とともに印象に残る音です。
後日知りましたが、環境省認定の「残したい日本の音風景100選」に選ばれているそうです。納得です。
瑞泉寺は開創して600年の歴史があるそうで、1886年に再建された本堂は日本で4番目の大きさといわれています。山門を通るまでは外からは全容を把握することができず、本堂に近づけば近づくほどに荘厳さ、壮大さに驚かされるはず。
瑞泉寺は山門を通る前から、さっそく彫刻を楽しめます。立派な扉の上部には大きな龍の姿が。奥行があり、立体感がある彫刻だから成せる迫力の作品が出迎えてくれます。
250年前に京都から派遣された宮大工により技がこの地に伝えられ、浅草寺や首里城など全国各地の神社仏閣や文化財をこれまで数多く修復するなど、その技術力は当時から高く評価されています。
そんな井波彫刻を新たな視点で楽しめるイベントが開催。彫刻士自らが寺内を案内して解説してくれます。一般的な案内役の人とはまた違った、現役の彫刻士ならではの視点で解説してくれることが評判を得ています。
寺内ではいくつもの作品を見ることができますが、基本的にはどれも高所に設置されています。そのため、昼間の明るいときに鑑賞してもなかなか確認できない部分がこれまでありましたが、ライトの光により陰影がはっきりして、これまで彫刻士さんも気づいていなかった新たな発見や注目するべきポイントが見つかっています。
現役の彫刻士さんたちも作品に行き詰まったりすると、寺に訪れてインスピレーションを受けて、作業に戻ることもあるのだとか。
料金:1グループ(10名まで)20,000円
※11名以上の場合は1名につき2,000円が加算拝観料、ガイド料、ライトアップ料
最少催行人数:1名(定員20名)
集合時間:17:00~19:00の希望の時間
気温が低くなると本堂内は室温がより低いので、時期によってはしっかりとした防寒対策をして訪れることをおすすめします。
井波別院 瑞泉寺ナイトミュージアム HPはこちら
井波ではこれまで紹介したように古き良きものを守るだけでなく、町中に新しい店舗やモノを見かけます。他の地域にあるような人の流出は当然この町にもありますが、流入もあるからこそ、町に循環が起きていると感じます。通常、人材が出ていくことを「流出」といった多少ネガティブな印象を受けます。ですが、 この地域では「源泉」として捉え、積極的に地域で人材を育て、育った人を排出して町の外で文化を創っていく。そんな人物になり得る人を積極的に誘致して、伴走していく。新しい地方活性の動きをとっています。
クラフトビールを販売している「NAT.BREW ナットブリュー」も、数年前にこの地に移住して、お店を始めたそうです。もともとはワインを製造されていたそうですが、この土地を気に入り、新たな分野であるビール作りにチャレンジしたそうです。地元の食材や、他店舗とのコラボ。お店からすぐの場所には木樽工場があり、そこから樽を購入するなど、この地ならではの取り組みを行って人気を集めています。
移住してきた人たち含め、ここに住む人たちからは「挑戦をしていく」という姿勢をすごく感じます。職人の気質が住人の皆さんに浸透しているのではないかと感じるほどです。
あるものを磨きあげ、より良いものにしていく。彫刻だけでなく、町全体も今後まだまだ魅力を増していくように感じました。また訪れたい町、おすすめしたい町です。
参考になりましたか? 旅行・おでかけの際に活用してみてください。
記事企画・監修:旅色編集部 ふかい
ライター:ふかい
瑞泉寺