- 日帰り
三重県文学旅行 Part1──日本の「探偵小説」を生んだ街へ
名張(三重県)
予算:7,000円〜
・旅行する時期やタイミングにより変動します。あくまでも目安ですので、旅行前にご自身でご確認ください。
・料金は1名あたりの参考価格で、宿泊施設は1泊2食付き週末料金を参考にしています。
更新日:2026/03/31
探偵小説って何? それはエロ・グロ・ナンセンスに彩られた醜い「人間の業」を描く禁断のカテゴリー。大御所だった江戸川乱歩の生誕地・名張に、そんなドロっとした土壌があるのか──。偽善的な観光案内の裏側にある真実の深淵をのぞきに、お散歩気分で、最新スポットへ出かけてみましょう♪
近鉄名張駅東口の江戸川乱歩像
江戸川乱歩生誕地碑広場

江戸川乱歩生誕地ミュージアム

清風亭

旧細川邸 やなせ宿

レトロ喫茶マーブル
前半は江戸川乱歩を、後半は名張市の歴史を体感します。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 本名は平井太郎。伊豆伊東の郷士だった平井家は、のちに津藩(三重県)藤堂家に仕え、 乱歩の祖父の代まで藩士として勤め続けたそうです。名張で生まれた太郎=乱歩は、大学卒業後、職を転々とし、大正12年「二銭銅貨」発表により探偵作家としてデビューを飾ります
- ★ デビューまでに就いた職業は、郡役所、貿易商社、造船所、新聞記者(数日で退社)、古本屋、大学図書館アルバイト、中華そば屋(屋台)、靴の修繕店……こうした経験が人間の「心の深淵」あるいは「生活者の真実」を描き出す、独自の視線を生み出したといわれています。ですが、別の角度から見れば、乱歩は「社会不適合者」だったのかも……。彼の、自分ではいかんともしがたい苦労に、激しく共感する人は決して少なくないと思います。。。
- ★ 名張市では最近(2025年)まで、デビュー100周年や生誕130年、没後60年を記念して、さまざまなイベントや展示が目白押しで開催されていました

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 故郷を離れて50年以上を経た昭和27年、乱歩は帰郷の機会を得、そのときの感慨を随筆「ふるさと発見記」に記しています。この一時的な帰郷を機に、名張の町では顕彰(表彰すること)の機運が高まりました。それは、市やお金持ちが企画したのではなく、市井の人々が自発的に表した乱歩への好意だったといわれています
- ★ 「六十年もごぶさたしていた私に対して、町の人々が自発的にこういう好意を見せてくださったのは、実にありがたいことだと思っている」by 除幕式での乱歩
- ★ おもしろいですねー。なぜかって? たとえば「芋虫」や「人間椅子」を書いた人物に、どうして“好意”を持てるのか……ってことですよ。やっぱり、かつて小学校の学級文庫に必ずあった「少年探偵団」の影響が大だったのだろうなぁと思う半面、行き過ぎたポリコレ(差別・偏見を防ぎ、中立的で公平な表現や行動を取ること)に侵された平成後半以降と違い、昭和は「偽善」に対する常識的な感覚を持ち合わせていた幸せな時代だったのではないか、とも思うのです、はい(笑)
江戸川乱歩生誕地ミュージアム

江戸川乱歩生誕地ミュージアム

雰囲気抜群の外観

明智探偵事務所を再現!

明智小五郎の衣装や愛用品も再現!

「D坂の殺人事件」現場だあー(期間限定)

語り合いの場としても
江戸川乱歩の世界観を体感できる「体験型ミュージアム」。市内で紅茶専門店を営む個人が、生誕地に建つ旧桝田医院の売却を知り、約700平方メートルの敷地と建物を購入。クラウドファンディングを活用することで、ミュージアムとしてリノベーションした最新スポット。オープンは2025年11月。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 最新スポットであり、このプランの山場です。廃業した医院は前記スポット2に面しており、まさにここは生家跡地です。リノベーションにあたってはクラウドファンディングを活用。結果は目標を大きく上回り、434人から1,293万5,000円が集まったといいます
- ★ いや〜、没後60年を過ぎて、いまだこうして乱歩の施設が新しくできるのは、それだけ氏の作品が人間の本当の姿をうがっていた(的確に捉えていた)からなのかもしれません。単なるエロ・グロ・ナンセンスを超え、世の「偽善」を剥ぎ取ったあとにむき出しになる人間の「闇」──言い換えれば「人間の真実」を裏側から追求するものだったからこそ、こうして今も継がれるのだろうと思うのです
- ★ 旧医院の処置室や手術室が廃業当時のまま残されており、これがリアルに怖いんですよ(ギャー)。画像はあえて載せませんでした(笑)。実際に見学することを強くおすすめします
- ★ 代表者・辻孝信さんの熱意については、ネットニュースなどに詳しく掲載されているのでぜひチェックを。ちなみに冒頭の画像は、1925年に発表された短編探偵小説「赤い部屋」を再現したもの。元は診察室でした。さてさてどんな話なのか興味が湧きますよね!
清風亭

清風亭

料理

地酒

お座敷

個室(要予約)

入り口
大正3年創業。百余年の歴史を刻む、鰻・川魚料理の専門店。旧町界隈・初瀬街道沿いに立地し、名張川の清流をのぞむお座敷の風情は、往時の面影を色濃く残す特等席。鰻の蒲焼きと並び、滋味深い「鯉こく」も名物。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ このあたりで昼食といたしましょう。名張川を望む2階お座敷で、うなぎはいかがですか? 雰囲気は最高です
- ★ 創業以来守り続ける秘伝のタレを使った「鰻蒲焼」は、関東風に背開きしたうえで、蒸さずに関西風で焼き上げるという、東西の中間地点に位置する名張地域ならではの味わいです。小生は関東の人間ですが、関西風の「焼き」もいいんですよね! またもうひとつの名物料理「鯉こく(鯉の味噌煮込み)」は、1週間かけて鯉の泥抜きをするといいます。その手間だけでもう、うめー!
- ★ 待合には囲炉裏が置かれ、江戸川乱歩はもちろん、松本清張、陳舜臣(ちん しゅんしん)、今東光(こん とうこう)といった、懐かしい作家たちの揮毫(きごう:筆で書いた言葉)が並べられています。多くの文人が乱歩ゆかりの食事に舌鼓を打ったことがわかりますよ。乱歩さんは晩年によく訪れ、名物「鯉こく」を好んで注文していたといいます
- ★ 乱歩さんの揮毫は、有名な「うつし世は夢 夜の夢こそまこと」──現実社会への適応を諦め、「虚構(夜の夢)」のなかに帝国を築くことで、乱歩はようやく自分の居所を見つけたのかもしれませんね……
旧細川邸 やなせ宿

旧細川邸 やなせ宿
正面(右から)
建物内部
中蔵(展示などができる)

駄菓子屋「宝島」
やなせ祭りの様子
旧細川邸は、江戸時代から明治初年に、薬商細川家(奈良県宇陀市)の支店として建てられた町屋。母屋など当時の面影を残しつつ、現在は観光客に向けた情報基地として、また地域住民のコミュニティセンターとして再生・再活用されている。
※令和8年4月1日より、一時休館予定。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ ここからは名張の歴史を巡っていきましょう。まずは商家です。施設概要にあるように、こちらの「やなせ宿」は奈良で薬商を営む細川家の支店でした。虫籠窓(むしこまど)、袖卯達(そでうだつ)、厨子二階(つしにかい=中二階形式の空間)を備えた典型的な町屋造りです
- ★ こちらを訪れたのは、町屋造りの見学だけでなく、実はほかにも理由があるんです。施設は現在、名張市の伝統文化・物産の案内や地域住民の交流の場として運営されているのですが、かつてこの町屋で育った男の子がいるんです
- ★ 名前を友吉といい、この家で9年を過ごしたあと、旧尼崎藩医・藤沢新平の養子になります。やがて大阪へ出て独立、薬種商を始めました。それが旧・藤沢薬品工業(2005年に山之内製薬と合併し、現在はアステラス製薬)なんですよ。この細川邸は、友吉の母方の実家が持っていた建物だったんです
- ★ こういう御大尽さまの屋敷を、昭和初期の「探偵小説」気分のなかで訪れると、どこかに怪人二十面相が潜んでいるような気がしてきて……(笑)。というタイミングで一時休館の衝撃的ニュース。運営方法の見直しのためで、休館期間は改修等を含め6カ月から1年程度を見込むそうです
レトロ喫茶マーブル

レトロ喫茶マーブル

店内

1980年代頃のレトロな雰囲気
昭和アイドルのレコードジャケット

クリームソーダ
伝統的な日本建築のなかで営業する喫茶室。1980年代をコンセプトとした昭和の香りを演出する店内は、江戸時代の町屋造りのなかにあって時空をゆがませる。古き良きノスタルジーの美しさを現代風に明るく解釈し直した空間。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ ちょっと歩き疲れたので、一服しましょう。やなせ宿のなかにある喫茶室にご案内いたします。こちら店内に一歩足を踏み入れると……
- ★ いや〜、昭和の香りムンムンなんですよ。壁面には歌謡曲アイドルのレコードジャケットがかけられ、花柄模様の家電製品、モンチッチ、ブラウン管テレビ、野球盤ゲーム、雑誌「マイバースデー」……あざーすっ! 体に悪そうな色のクリームソーダには赤いチェリーが乗り、固めのプリンを頬張れば、そこはもうパラダイス!
- ★ 旧細川邸やなせ宿にはほかにも、昔懐かしい駄菓子屋を再現したスペース「宝島」があり、なかなか楽しませてくれます。品揃えされる駄菓子は約30品目。ワイは「さくらんぼ餅」が好きだったんよね〜。あるかなぁ~。なお、スポット5に準じて一時休館の予定。詳細は連絡先までお問い合わせください
名張藤堂家邸跡
名張藤堂家邸跡
全景(空撮)
邸内
展示室風景
市内の作家による美術展「名張の美」(2024年)
朱具足
藤堂高吉(とうどうたかよし)を祖とする名張藤堂家の屋敷跡。津藩藤堂家の一門で、1636年から明治維新まで11代にわたり、名張に居を構えた。建物は1710年の名張大火で焼失したあとに再建された殿館の一部。「中奥」「祝間」「圍(かこい)」などは主の生活空間にあたる。

鹿子沢ヒコーキのおすすめポイント
- ★ 商家に続いては、武家屋敷を見学しましょう。2026年NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」に登場する藤堂高吉のお屋敷が残っているんです。館内には学術的にも貴重な文化財──「豊臣秀吉朱印状」「鉄唐冠形兜・一の谷形兜」「朱具足」「藤堂高吉公一代記」「羽柴秀吉・丹羽長秀の書筒」などが屋敷とともに一般公開されています
- ★ 名張藤堂家の祖である高吉は、幼少時に大河ドラマの主人公・秀長(豊臣秀吉の弟)の養子になり、のちに藤堂高虎の養子に迎えられた人物。文武ともに優秀で、本家・藤堂家の跡継ぎと目されていましたが、高虎に実子が生まれたことで跡継ぎになれず、名張に領地を与えられたという“残念な”武将でもあるんです
- ★ 高吉の無念を乱歩風にいえば「優秀すぎるがゆえに、一生を飼い殺しにされた男」となるでしょうか。名張藤堂家は高吉以後、明治維新までこの地を離れることがありませんでした。もはや大名への道を阻まれたと悟った名張藤堂家は、ネガティブな感情をポジティブなエネルギーに転換していきます。領地の経営力向上に努め、津藩の一村落だった名張を「独立した城下町」のように発展させたといわれているんです。う~ん、人間ドラマがありますよね〜
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※掲載情報は取材時のものであり、変更が生じている場合がございます。詳細は各施設にご確認下さい。
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ライター・エディター・コケ愛好家藤井久子
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「城びと」アンバサダー佐藤颯竜
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プランナー旅色コンシェルジュ・和田


























