古都・金沢を人力車で巡る、“急がず味わう”という贅沢体験
マツバラマツバラ

石川県

友達 / 20代 / 訪れた時期:1月

2026/02/24

古都・金沢を人力車で巡る、“急がず味わう”という贅沢体験

“いつもの観光とは少し違う、その土地ならではの特別な体験や思い出づくりをしたい”そう思って旅に出たのに、気がつけば定番の街歩きで終わってしまう──そんな経験に心当たりはありませんか?
今回“定番の旅にちょっぴりスパイスを加える旅”を求めて訪れたのは、石川県・金沢市。石畳の街並みが残るこの地には、歩くのとも車で巡るのとも違う楽しみ方がありました。それが人力車。
金沢市で屈指の歴史と実績を誇る「金沢観光人力車~浪漫屋~」で、俥夫さんの語りに耳を傾けながら巡る街旅。人力車デビューを果たした私が感じた、“人力車で巡る街旅”の魅力をご紹介します。

円長寺が目印!“時間を預ける旅”のスタート

旅の出発は金沢を代表する観光スポット・ひがし茶屋街。
江戸時代の風情を残す石畳と格子戸の町並みを眺めながら、初めての乗車に少しドキドキしながらも、期待が高まります。スタート地点は円長寺前。人力車とともに、優しい笑顔の俥夫さんが出迎えてくださいました。

まずは乗り方のレクチャーから。「ゆっくりで大丈夫ですよ」と丁寧にサポートをしていただいたおかげで、「ちゃんと座れるかな?」という不安もいつのまにか消え、気がつけば無事に乗車完了。座ってみると、ソファのような快適な座り心地目線は想像以上に高く、「実は車よりも高いんですよ」とのひとことに思わず驚きながらも、すれ違う車と見比べて、その高さを実感します。

「それでは出発します、1・2・3!」という掛け声とともに、フワっと体が持ち上がり、少し宙に浮いたような不思議な感覚で人力車の旅がスタートしました。

45分でじっくり巡る、金沢の歴史と街並み

今回お願いしたのは、一番人気の45分周遊コース
ひがし茶屋街周辺を中心に、以下のスポットを巡ります。

・宇多須神社
・梅の橋
・浅野川
・泉鏡花記念館
・久保市乙剣宮
・彦三緑地
・主計町茶屋街

短すぎず長すぎず、「観光」と「余韻」のバランスがちょうど良いコースでした。

もし歩いていたら、きっと気がつかなかったこと

人力車に乗車したのは1月上旬。

金沢では「弁当忘れても傘忘れるな」と言われるほど、冬は雨や雪が多く、曇り空でも「今日は晴れているね」と言うのだそう。天気を心配しながら迎えた当日でしたが、なんと、青空がのぞく晴れ模様!
「こんな日は滅多にないんです、晴れ女ですね~」
そんな会話を交わしながら揺られること数分、最初に立ち寄ったのが宇多須神社でした。

ここには卯と辰の神様が祀られています。かつては方角を東西南北ではなく干支で表しており、金沢城を中心に見ると、この一帯は「卯」と「辰」の方角。鬼門にあたるため、城を守る意味を込めて卯と辰が鎮められたといいます。境内をよく見てみると、金色に輝く加賀藩前田家の家紋も。

さらに、驚いたのが狛犬。なんと、逆立ちをしているのです。対の狛犬には子どもの姿も。

逆さ狛犬

足元には子どもの姿も見られる親子狛犬

逆さ狛犬

足元には子どもの姿も見られる親子狛犬

明治中期から昭和初期にかけて、金沢を中心に“逆さ狛犬”が流行し、名工たちが腕を競うように、個性豊かな狛犬をつくったのだとか。宇多須神社のほかにも、金沢駅や兼六園周辺をはじめ、石川県内の100社以上の神社に“逆さ狛犬”が奉納されているといいます。普段は何気なく通り過ぎてしまう狛犬に目を向けて参拝してみても、新しい発見があるかもしれません。

旅のあとに、「ここ、しっかりと見ておけばよかった」「あれ、そんな意味があったのか」と知ることも多いものですが、各スポットの豆知識やエピソードをその場で教えていただけるので、見どころを逃すことなく楽しめるのも人力車の醍醐味です。

風景の裏側を知る、という贅沢

人力車に乗って感じたのは、金沢の景観は偶然できたものではなく、そのひとつひとつに意味があるということ。

例えば、金沢で多く目にする、車も通れない、人のみが歩けるような細道。
「ここ、ドラマやロケでも良く使われるんですよ」
そんな一言に目を輝かせていた私ですが、実はこの細道にも歴史的背景がありました。

実は金沢は戦時中、空襲を受けていません
さまざまな説があるそうですが、そのひとつが気象条件。雲が多く、地上が見えにくかったため、爆撃を免れたともいわれています。その結果、木造建築や細い道が今も多く残っているのだそう。

「久保市乙剣宮」境内裏。赤い鳥居の奥に見える2つの石柱が下へと続く「暗がり坂」の入り口

「暗がり坂」からつながる細道

冬の風物詩「雪吊り」

「久保市乙剣宮」境内裏。赤い鳥居の奥に見える2つの石柱が下へと続く「暗がり坂」の入り口

「暗がり坂」からつながる細道

冬の風物詩「雪吊り」

途中立ち寄った「久保市乙剣宮」の裏にも「暗がり坂」という階段付きの細道があるのですが、実はその道は主計町茶屋街への抜け道になっており、昔は参拝を装ってそっとお茶屋遊びに抜け出す男性も多かったという、思わずクスっとしてしまうエピソードまで……笑

そして、金沢の冬の風物詩「雪吊り」。そのルーツは明治時代初期で、リンゴの木の枝を雪から守るために縄で縛られたのが始まりだそう。

ただ美しいだけではない。金沢の景観は、厳しい気候や暮らしを守るために生まれた、“生活の延長線上の美しさ”なのだと、気づかされた時間でした。

会話の中で知る、金沢の“縁起”

道中では、こんなお話も。
“裏干支”って知っていますか?」

「泉鏡花記念館」

兎の行燈

「泉鏡花記念館」

兎の行燈

裏干支とは自分の干支のちょうど反対にあたる“向かい干支”のことなのだそう。立ち寄った「泉鏡花記念館」では、文豪・泉鏡花がこの“裏干支”を大切にしていたというお話も。

酉年生まれの泉鏡花は、「酉年の反対の干支である卯を大切にすると幸せになる。」という母親からの教えをもとに兎グッズのコレクターになったのだとか。そのため、「泉鏡花記念館」の周辺の住居やお店には兎の行燈が壁に掛けられていました。

さっそく私も干支の組み合わせ表を見ながら自分の裏干支をチェック。裏干支は、足りない部分を補ってくれる守り神とも言われているそうで、少し縁起のいい知識もプラスできた気がします。

街の見え方が変わる、という余韻

人力車に乗る前にひがし茶屋街で見かけた、軒下に吊るされたトウモロコシ。「なぜこんなところにトウモロコシが?」と不思議に思っていたのですが、これにもきちんとした理由がありました。実はこのトウモロコシ、加賀藩前田家ゆかりの安産祈願の寺・観音院で、年に一度行われる「四万六千日(しまんろくせんにち)」という行事の日に授けられる縁起物なのだそう。

このトウモロコシには、
・魔除け
・粒が多いことから子孫繁栄
・毛が多く“もうもう”としていることから「儲けがある」
という願いが込められています。

街歩き中の小さな疑問も、人力車に揺られながら俥夫さんの語りを聞くことで、金沢ならではの物語として腑に落ちる。そんな発見ができるのも、俥夫さんのガイドがあってこそです。人力車を降りたあとに、ひがし茶屋街を歩いてみると、同じ道のはずなのに、街の見え方がどこか違ってみえます。道中で教えていただいた話を街中で見つけて「これだ!」と気づいたり、おすすめされた場所を実際に訪れてみたりと……。人力車を降りたあとも、旅の余韻は続きました。1日目に人力車を利用し、金沢の街に詳しくなった状態で、その後の旅行を楽しむという時間の使い方も面白いのではないでしょうか。

一度乗ればファンになること間違いなし!心躍るおもてなし

クイズで楽しむ、記憶に残るガイド

各スポットにまつわる小ネタや豆知識を知りながら巡ることができる人力車は、ただ俥夫さんの語りを聞いて進むだけではありません。移動途中には、「さて、ここでクイズです」と楽しい3択クイズの時間も。

クイズの内容は、金沢の歴史からちょっとした雑学までさまざま。 驚くような正解も多く、 答え合わせのたびに「へぇ〜!」と盛り上がりながら、気がつけば金沢の豆知識が増えていくのも嬉しいポイント。 「ねぇ知ってる?」と、旅のあとも誰かに話したくなるような“知識のお土産”まで持ち帰ることができました。

人力車だからこそ残せる、旅の一枚

コースの途中では、景色の良いスポットごとに「ここで一枚撮りますね!」と俥夫さんがカメラマン役に。構図も、すべておまかせで、「いい笑顔でいきましょう!」そんな声かけのもと、街並みとともに写真を残せます。

あとから見返したときにその瞬間が自然と思い出せる、自分たちだけでは撮れない特別な一枚を残せるのも魅力のひとつです。

俥夫さんの技術を間近で体感

しばらく進むと、「ここ、実は人力車ですり抜けられるんですよ」と俥夫さんが一言。指をさされた先にあったのは、石の車止めでした。

「車幅ギリギリでこんなところを抜けることができるのか」と驚いているのも束の間、少し角度を整えると、車輪と車輪の間に石を吸い込ませるように、するりと通り抜けていきました。その動きは驚くほどになめらかで、見ていて思わず「おぉ…」と感嘆の声が漏れてしまうほど。

人力車を引くためには研修があり、その研修でコツや感覚を掴むそうです。乗車中は日差しの心配や、小さな段差への声かけなど、細やかな気遣いが感じられ安心して乗車できました。

「人力車って敷居高そう……」そんな心配はご無用!

「乗ってみたいけど、なんだか敷居が高そう。」そう感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、私自身もずっとそう思っていました。思い切って聞いてみると......
「全然気軽に乗ってください!地元の方も、“ここまで乗せて”とふらっと乗られたりしますよ」と、にこやかに教えてくださいました。また、乗車場所と降車場所を変えることや、主要スポットまでの送迎も可能で、時間や予算に合わせて柔軟に対応できるのも魅力です。こうした柔軟さだけではなく、俥夫さんの細やかな気遣いも安心できたポイントで、終始リラックスして過ごせ、初めてでも緊張することなく楽しむことができました。

いつもの街歩きを“特別”に、心に残る人力車という選択

今回、人力車に初めて乗車してみて、人力車はただの移動手段ではなく、旅の満足度をグッと高めてくれる存在だと感じました。特にこんな思いをお持ちの方にはぴったりです。

①ガイドブックには載っていない景色や視点で、思い出を残したい方
②急がず、ゆったりとしたペースで金沢観光を楽しみたい方
③写真や思い出に残る、少し特別な旅のワンシーンを求めている方

もし金沢で、「いつもとは少し違う旅がしたい」と思った方は、人力車に時間を預けてみてはいかがでしょうか。「気軽に乗っても大丈夫ですよ」という俥夫さんの言葉を信じてみてください。金沢の街を愛する俥夫さんの語りと、人力車ならではの視点で見る風景は、きっと心に残る特別な体験になるはずです。

 旅色編集部

参考になりましたか? 旅行・おでかけの際に活用してみてください。

記事企画・監修: 旅色編集部

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