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2026/03/23
新潟県小千谷市。冬には数メートルの雪に覆われるこの地は、世界中の愛好家が「一度は訪れたい」と願う錦鯉発祥の地です。
今回は、普段はなかなか立ち入ることができない名門「大日養鯉場」へ特別に潜入。創業60年の最高峰「御三家」を守り続ける現場から、世界を虜にする「泳ぐ宝石」の真髄をレポートします。
大日養鯉場
この記事の目次
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今や錦鯉は、日本の伝統文化であると同時に、日本を代表する「超成長産業」の主役となっています。
令和5年の輸出額は約66.6億円。この10年で2倍以上に成長しています。
国内生産額の63%が輸出向け。中国、アメリカ、そして東南アジアや欧州の富裕層の間で、ステータスシンボルとして爆発的な人気を誇ります。
2024年度の新潟県農林水産物の輸出額において、錦鯉は62.9%を占め、あの「米(36.3%)」を大きく上回る過去最高の39億円を記録しました。
水産庁によると、新潟県は全国の錦鯉生産の約半分を占めるトップランナー。まさに「世界のニシキゴイ」はここ新潟から生まれているのです。
錦鯉の魅力は、何といってもその芸術的な模様と風格です。特に大日養鯉場が注力するのは、「御三家」と呼ばれる以下の3品種。
紅白(こうはく)

鯉 紅白(こうはく)
白地に鮮やかな紅。シンプルゆえに最も奥深い。
大正三色(たいしょうさんしょく)

鯉 大正三色(たいしょうさんしょく)
紅白に墨(黒)が加わった、華やかな美しさ。
昭和三色(しょうわさんしょく)

鯉 昭和三色(しょうわさんしょく)
ダイナミックな墨の模様が特徴。力強い美。
それは、数百万匹の中から選ばれた「奇跡の血統」と、時を重ねるごとに艶を増す「質」にあります。泳ぐ姿はまさに「動くキャンバス」。その気品と生命力に、世界の富裕層は惜しみない投資を続けるのです。
錦鯉の歴史は、小千谷・長岡にまたがる「二十村郷(にじゅうむらごう)」から始まりました。
この地は、古くから急峻な棚田が広がる地域。かつて食料として飼われていた真鯉の中に、突然変異で色のついた個体が現れたのが始まりとされています。この地が「聖地」となったのには理由があります。
• 雪解けの軟水: ミネラルバランスの良い雪解け水が、鯉の肌を白く輝かせ、紅を鮮やかにします。
• 粘土質の土壌: 野池の土に含まれる成分が、錦鯉の成長と発色に最適な環境を与えます。
厳しい自然環境こそが、世界一の美を生むための「ギフト」だったのです。

新潟の野池
名門・大日養鯉場の1年は、まさにドキュメンタリーそのものです。
春〜夏 産卵・選別
数百万匹の稚魚から、職人が一瞬の判断で「宝の原石」を選び抜きます。その確率は数万分の一ともいわれます。
夏 池入れ
豊かな自然の中にある「野池」へ。大地のエネルギーを吸収させ、体を大きく、美しく育てます。
秋 池揚げ
野池から引き上げる運命の瞬間。1年でどれほど成長したか、職人の腕が試されます。
雪深い中、ハウス内で温度管理を徹底し、翌春の出荷に向けて大切に守り抜きます。

これまでの受賞内容の一部が部屋には飾られています
選別作業は、わずかな模様の乱れも見逃さない真剣勝負。この妥協なき「選別眼」こそが、大日養鯉場の評価されている点であり、創業60年の信頼を支え、品評会で数多くの賞の受賞につながっています。

今回お邪魔した大日養鯉場のような生産現場は、防疫や作業の関係で普段は一般公開されていません。しかし、小千谷にはその魅力を誰でも体感できるスポットがあります。
• 「錦鯉の里」: 小千谷市にある、錦鯉の歴史や資料が展示されている施設。美しい錦鯉を間近で鑑賞し、餌付け体験も楽しめます。
• 冬の風景: 雪深い中で湯気を上げる養鯉場のハウスは、この地ならではの情緒ある光景です。
ライターの独り言:取材中、池を泳ぐ見事な鯉を目にした時、その迫力に言葉を失いました。米の輸出額を超えたというデータにも驚きましたが、現場の職人さんの「一匹に対する情熱」を知れば、その価値は数字以上に重いものだと実感します。
日本が世界に誇る「泳ぐ宝石」。その物語の全貌を確かめに、ぜひ一度、新潟・小千谷へ足を運んでみてください。そこには、世界を熱狂させる本物の美しさが待っています。
参考になりましたか? 旅行・おでかけの際に活用してみてください。
記事企画・監修:旅色編集部 ふかい
ライター:ふかい